日本三景松島で知られる宮城県松島町の松島海岸付近を走る国道45号で10月下旬の週末、一部区間を全面通行止めにする交通社会実験が計画されていることが28日、分かった。車道にオープンカフェやイベントスペースを設け、景観を楽しめる歩行空間を創出。観光面のにぎわい効果や渋滞などの課題を検証し、周辺道路の今後の在り方を探る。
シャトルバス運行
関係者によると、宮城、岩手、青森3県の太平洋沿岸を縦断する国道45号で、全面通行止めを伴う社会実験を行うのは異例。幹線道路のため交通量が多く、関係者間の利害調整が難しいという。
実験区間は、JR松島海岸駅付近から松島観光物産館付近までの約700メートル(地図)。このうち北側の約250メートルは全ての車両を通行させず、歩行者天国にする。地元商店会によるイベントなどを予定する。
期間中は代替の交通手段として、循環シャトルバスの運行を計画し、海岸付近への円滑な誘客も狙う。主要交差点などに誘導員を配置し、通行車両の迂回(うかい)を促す。
数十年来の課題
実施主体は国や宮城県、松島と利府両町、地元観光協会や県トラック協会などによる官民組織「松島町交通社会実験協議会」。
松島町には新型コロナウイルスの感染拡大前、年間約300万人の観光客が訪れていた。松島海岸を通る国道45号は観光シーズンに激しい交通渋滞が発生し、アクセス性の向上が数十年来の課題となっている。
社会実験の実施について、地元関係者は「観光地にもかかわらず、大型車の通行が多く、観光客から『せっかくの景観が台無し』と言われてきた。車の流入制限で新たな誘客につながるのでは」と期待する。
松島海岸では2013年12月と14年8月にも、渋滞緩和を目的に社会実験が行われた。ともに通行止めなどの交通規制はせず、周辺の県道や三陸沿岸道への迂回を呼びかけて交通分散を図ったが、平日の交通量は対象区間で約1割減少するにとどまった。